- 何よ、その格好、変なの -
実は聖司の髪型が嫌いだった。
何よ、そのベートーベンみたいな髪型って、変なのって思ってた。
毒舌にせっかちの性格で、あんな優しくきれいな旋律を奏でられるなんて、
今でも時々ウソっぽいと思ってる。
制服に自分のシャツを着ている。
センスがいいから似合うんだけど、校則違反じゃなかったの?
生徒会長の玉緒先輩と仲がよかったって、正装してなくてどうするのよ。
玉緒先輩もね、いつもルカとコウの服装チェックに厳しいのに、聖司だけには甘えさせてる。
あの二人、いつもボケとツッコミのようなコンビで、一緒にいると会話がおかしくなって、
そばにいる私はいつも大笑いだった。
そういえば、一緒に動物園に行った時、
キリンはゾウと同じくゾウ目キリン科に属しているって話もあったね・・・
博学の玉緒先輩がまじめそうに言ったから、聖司どころか、私だって信じるところだった。
玉緒先輩は、やはり人の面倒見がよく、優しい人だといつも思ってた。
聖司のような拗ねてて、素直じゃない人にも優しく理解してあげた。
「設楽は寂しがり屋だ」と玉緒先輩にもよくもわかっている。
確かにそうだったね、実は誰かにピアノを聴いてほしかったでしょうね。
誰か、ピアノの世界にかくれんぼして、迷子になった自分を探しに来てほしかったでしょうね。
わざと他人を傷付けて、自分を守る上、こんな自分、誰かどれぐらい受け入れられるか試してたでしょう。
これが、聖司だね。
その子供っぽさの純潔こそ、ピアノ旋律をきれいに流すことができる理由の一つかもしれないと、
私は考えてた。
- ピアノの世界に輝いてる愛しき聖司 -
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